とにかく、兎に角

とにかく

 とにかくとは、「とにかくに」の略で、なにはさておき、いずれにせよといった意味あいで用いられる言葉。例えば、「あいつはとにかく、君はバカだ」は、「あいつ」についてバカだのチョンだのなんやかやウワサされているが、その問題はさておいて、君はバカであることに間違いないと念を押されているのである。とにかくの「と」は、「あのように」「そのように」という意味の副詞で、同様の意味の副詞「かく」と対をつくり、「とかく」「とにもかくにも」「ともかく」のように、いずれも「あのようにもそのようにも、問題はいろいろあるが(それらはいったん置いておいて)」といったニュアンスの慣用語を作る。つまり、「とにかく」は話題を切り換えるときに使える言葉であり、話題を切り換えるさしたる理由がなくても(相手のおもしろくない話を聞くのに飽きた、などという理由でも)、「それはとにかく」と前置きすれば、自分の話をし始めることができるという万能薬である。

 いうまでもなく「兎に角」は当て字。仏教で、現実にはありえないものという意味で使われる「兎角亀毛(ウサギのツノ、カメの毛)」という語の「兎角」をそのまま使ったらしい。「とにかく」の意味とはまったく関係ないので、ほんとうに「とにかく当ててみました」的な当て字だといえよう。(CAS)

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