われわれが、「はい、口をあけて舌を出して」と医者に指示されてもいないのに舌を出すしぐさを見せるのは、①相手をばかにしたり、あざわらったりするとき、あるいは、②失敗したときの照れ隠しのためである。「舌を出す」という言い方にもそのふたつの意味があるが、①は、タチの悪い子どもでもあるまいし、いい大人が実際に人前で舌を出して「ばーか」などと言ったりしないので、その意味で「舌を出す」といった場合は、「心の中で舌を出す」、つまり、陰で人をばかにしたり、あざけったりするという意味で用いられる。②は、失敗したときの代償行為であり、いい大人になっても実際に舌を出したり、頭を掻いたりする人はいるので、照れ隠しの「舌を出す」はその行為そのものを言い表している。(CAS)