おいしい(美味しい)とは、美味である、うまいという意味。「よい」「すぐれている」ことを表す「いし」が、女性たちの間で「味がよい」という意味で用いられ、さらに宮廷の女官たちの間で「いしい」「おいしい」に変化したものといわれる。美味であることを表す形容詞には「おいしい」と「うまい」があるが、いまでもお上品な女性の皆様は「おいしい」を選び、がつがつとカツ丼をたいらげた後、げっぷをしながら「ああ、うまかった」などと言うのを下品であるとして避けている。そんな気どったお嬢様方を評して、男性諸氏は「うまい、と言った方が実感がある」と言ったりするが、「うまい」は「甘い」と同源であるように、「甘けりゃうまい」と思っていた時代の味オンチな人の味覚評価であるといえないこともなく、上品な皆様は変わらず「おいしい」を使っていただければよいのではなかろうか(がつがつとカツ丼をたいらげ、げっぷをしながらであったとしても、である)。
「おいしい」はまた、「おいしい話」「おいしい仕事」のように、都合がよい、簡単な割に利益が大きいといった意味の慣用語として用いられる。こちらの「おいしい」は上品なお嬢様方は決して用いず、脂ぎった中年男が「へっ、へっ、へっ」などと笑いながら、「こりゃあ、おいしい話ですなあ」などと下品に口走るのが常となっている。(CAS)
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